1月
年中働き詰めだった母がふいに仕事を休み、わたしをカラオケに連れていってくれたことがあった。当時小学3年か4年生くらいだっただろうか。確か母はそのとき「お母さんはいいからあんたが歌いなさい」と言って、わたしのへなちょこな歌をずって聴いてくれた。
帰り道、母と手をつないで歩きながら上機嫌なわたしは「お母さんの子でよかった」という言葉を口にした。カラオケに連れていったから唐突にそんなことを口走るのかお前は、とつっこまれながらふたりで笑った…ような記憶があるけれど詳細は忘れてしまった。でもわたしにとっては特別な、とびきり美しい夜だった。
進路を決める際、音楽に関わる仕事がしたいと打ちあけたら、母が「そんな予感がしていた」とちいさく呟いたのを覚えている。
わたしは今もあのとびきり美しかった夜に支えられています。
お母さん、お誕生日おめでとう。